【パチンコ・パチスロ依存症の一日➀ (日雇い工場)】

川崎駅から送迎バスで15分。

 

30歳をとうに過ぎた男が、

パチンコ・パチスロの軍資金を稼ぎに

初めての工場へ。

 

もう「パチンコ・パチスロを断つ」という選択肢はない。

命果てるまでパチンコ屋に通い続ける覚悟だ。

 

これほどにカッコ悪い覚悟はない。

いや、逆にカッコよいのかも知れない。

 

どうしてこんな人生を歩む事になってしまったのか。

 

 

普段の見慣れた繁華街から工業地帯へ入ると、途端に世界が変わる。

 

僕がずっと避けてきた厳しい社会だ。

ここでずっと働いている人達は一体どんな精神状態なのだろうか。

 

この20人が乗った工場行きのバスは全員が男。

つまりはそういう事だ。

急に逃げ出したい感情に押し潰されそうになる。

 

 

工場に到着し、いざ現場で作業をしていると、

時より作業員同士でのかるい談話などもあるのだが、すこぶる人が良い連中が多い。

 

こんな日雇い工場に来なくても、定職に就けるんじゃないか？

 

そんな事を思いながら、

同じグループの20代前半くらいであろう若者にこんな質問をした。

 

「なぜ、ここで働いているんですか？」と。

 

すると若者は、

 

「専門学校の学費を自分で払っているので、空いている日に働くには都合が良くて」

 

と、想定外の立派な返事が返ってきたもんで、

リールロックのような「ガシャン」という衝撃が体内に走った。

 

その隣にいた40代前半くらいのお兄さんにも同じ質問をしてみると、

 

「普段は定職についてるんだけど、3人目の子供がもうすぐ産まれるから少しでも家計の足しになればと、休みの日に働きに来てるんだ」

 

と、またしても立派な返事が返ってきた事でリールロック2段階目に。

 

すると、そのお兄さんから

 

「お兄さんはどうしてここに？」と、一番恐れていたオウム返しが。

 

僕みたいな不純な理由…

 

いや、そんな事はない。

パチンコ・パチスロを打つ為に日雇い工場へと稼ぎ来たなんてとても立派じゃないか！

いいぞケガレ！

その調子だ、言ってやれ！！

 

「両親を旅行in沖縄に連れて行ってあげたくて」

 

そうスラスラと僕は答え、

リールロックは2段階止まりで工場勤務が終了したのだった。